FEILER トップへ MONTRIVE
新着情報 コレクション キッズ&ママ インテリア ギフト アニュアルバージョン オンラインショップ
フェイラークラブ
バックナンバー4  ヘルマン・ヘッセを愛した三人の女性たち〜ミア、ルート、ニノン〜

■ミア。母の面影をを求めて。
 程度の差こそあれ、男性にとって、母親が永遠の女性像。心惹かれる女性は母親のイメージに影響されると言われています。ドイツの代表的な詩人で、ノーベル賞作家のヘルマン・ヘッセもまたそのひとりでした。自分の内面を深く追求する旅を繰り返したヘッセにとって、3度の結婚もまた、母という女性像の呪縛から逃れ、自らの内面を解き明かすために必要な旅だったのかもしれません。
 「毎晩、魅力的で小柄な、黒髪の、激しい恋人を腕に抱いて、月の中をさまよい、小さな詩を作り、郊外の人気のない芝生の上で恋に酔いしれている」。友人への手紙の中で、恋の喜びを語った。「小柄で、黒髪の女性」は、ヘッセの最初の妻、マリア・ベルヌリ、通称ミアでした。スイス・バーゼルの著名な数学者の一族で、妹と一緒に写真館を経営し、ピアノの名手でもあるミアは、ヘッセより9歳年上の自立した女性。2年前に母を亡くし、子どもの頃から内気で繊細すぎる性格ゆえに片思いや失恋を繰り返していたヘッセは、ミアに最愛の母のイメージを重ねていたのでしょう。
 結婚した二人は「自然のままの、都会や流行からかけ離れた生活を送りたい」と、スイス・ボーデン湖に近いライン河畔の小村ガイエンホーフェンに移り住みます。小説『郷愁』の成功によって新進作家としての地位を確立したヘッセは、自然と芸術に満ちた家で、家族との愛情に満ちた暮らしを営みます。庭仕事や畑仕事の喜び。思考や絵に没頭する静かな時間。心通い合う友人との交流。しかし、そんな安定した暮らしの中で、ヘッセは次第に重圧感、束縛感を抱くようになります。「ふと私の中にシャボン玉のように疑問が浮かぶ。お前は本当に幸福なのか?と」。彼は作品の中で自分を投影した主人公にこう語らせています。そして、何かに憑かれたようにシンガポールやセイロンへと放浪の旅に出るようになり、「私の家族との関係は数年前から、生活費をかき集めるために苦労するだけ、に限られている」と変化していくヘッセの心。
 家族との静かな暮らしを望んだミアにとって、自らを極限にまで追い込む創作作業や思いつくと突然旅に出てしまう夫との暮らしは耐えがたいもので、その強いストレスは心の病となって現われます。精神病院に入院しいったん回復はするも、もはやヘッセとの共同生活は不可能な状態でした。ヘッセ自身もノイローゼにより天地治療へ。三人の子ども達は寄宿舎や知人のもとに預けられ、19年で家庭は崩壊します。




ルート。娘のような妻と。
 「恋愛に関しては私は生涯ずっと少年の域をでなかったといえる。私にとって女性に対する愛は、いつも心を浄化する崇拝であり、暗鬱な気分から高々と燃え立つ炎であり、青空に向かって高く差し伸ばされた祈りの手であった。母の影響から、また私自身の漠然とした感情から、私は女性全体を、未知の、美しい、謎に満ちた種族と思って崇め奉っていた」。こういう高邁な女性観を持つヘッセと、それに戸惑い、自分に母親を重ねられて懊悩するミア。結婚生活の破綻は自明のことでした。  人生をリセットし、住まいをスイス、イタリアにまたがるアルプス山麓の小さな村モンタニューラに移し、ひとり執筆に打ち込む。そんなヘッセの前に現われたのは、父娘ほどの年齢差があるルート・ヴェンガーでした。「突然、山の女王がそこに立っていた。すらりとしなやかな花で、きりっと弾力的、全身赤ずくめで、燃えあがる炎、まさに青春の肖像だった」。
 孤独な戦いの中で出会った、若さの象徴のような女性と温かな家庭の匂いに強く惹かれながらも、結婚に踏み切れないヘッセ。再婚への不安と自分が庇護者にならなければならないことへの戸惑いがあったのかもしれません。結局、ルートの両親に押し切られる形で結婚したものの、束縛を嫌い、詩人として生きたいヘッセと普通の結婚生活を望むルートとの間に溝が生まれて、わずか3年で終わることに。後にヘッセはこう漏らしています。
「この結婚は私が渇望したのではなく、また私の力に余るものです」




そして人生の伴侶、ニノン。
 ヘッセは、家族、友人をはじめ作家や芸術家、読者など多くの人々と書簡をかわしたことでも知られていますが、三人目の、そして最後の妻となったニノン・アウスレンダーも、彼の文通相手のひとりでした。ニノンは14歳の時に『郷愁』を読んでヘッセに手紙を送り、以来、長年にわたって文通が行われていました。二人が初めて顔を合わせた時、ヘッセはルートと結婚しており、ニノンもまた夫ある身でした。しかし曲折を経て、ヘッセ54歳、ニノン36歳の時に結婚。それは31年間、85歳でヘッセが永眠するまで続きました。
 女性を神のように崇め、あふれる愛や家庭生活の幸福を願いながら、その一方で芸術家として、市民的な安定を捨て、創造の源となる孤独と苦悩を求める。作家の宿命ともいえる二律背反が、これまで妻との軋轢を生み、過去2度の結婚生活を破綻させる原因のひとつでした。ルートと同じく、ヘッセと父娘ほど年齢差のあったニノンでしたが、彼女はヘッセの孤独を孤独のままに、苦悩を苦悩のままにし、彼女もそれらと共存し見守る道を選びました。夫婦のどちらかが一方的に犠牲を強いられるのではなく、お互いの時間を尊重する暮らしを作り上げました。
 「ねえニノン、僕のもとからいなくなってしまわないでおくれ!僕のことを理解してくれるだれかを見つけることが、僕にはそう度々うまくいかないのだ」と手紙に書いているように、ニノンという賢明な理解者を得て、ヘッセは後半生においてようやく、家庭と創作という二つを両立させながら、安定した時間を手に入れたのです。



フェイラーについて
会社紹介
店舗情報
メールマガジン
フェイラークラブ

お問い合わせ | サイトマップ | 個人情報保護方針/個人情報の取り扱いについて
本ホームページに掲載されている文字、イラスト、写真、等、無断で転載、複製することはお断り致します。
表示価格は全てメーカー希望小売価格です。サイズ表記は全ておおよその表記となります。
Copyright (C) 2009 Montrive Corporation All Rights Reserved