程度の差こそあれ、男性にとって、母親が永遠の女性像。心惹かれる女性は母親のイメージに影響されると言われています。ドイツの代表的な詩人で、ノーベル賞作家のヘルマン・ヘッセもまたそのひとりでした。自分の内面を深く追求する旅を繰り返したヘッセにとって、3度の結婚もまた、母という女性像の呪縛から逃れ、自らの内面を解き明かすために必要な旅だったのかもしれません。
「毎晩、魅力的で小柄な、黒髪の、激しい恋人を腕に抱いて、月の中をさまよい、小さな詩を作り、郊外の人気のない芝生の上で恋に酔いしれている」。友人への手紙の中で、恋の喜びを語った。「小柄で、黒髪の女性」は、ヘッセの最初の妻、マリア・ベルヌリ、通称ミアでした。スイス・バーゼルの著名な数学者の一族で、妹と一緒に写真館を経営し、ピアノの名手でもあるミアは、ヘッセより9歳年上の自立した女性。2年前に母を亡くし、子どもの頃から内気で繊細すぎる性格ゆえに片思いや失恋を繰り返していたヘッセは、ミアに最愛の母のイメージを重ねていたのでしょう。 |
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