「ファム・ファタル」、運命の女性、魔性の女という言葉がある。妖しい魅力で男を翻弄し、破滅させてしまう女性を意味していますが、美貌の女スパイ、マタ・ハリもまた、その1人に数えられています。20世紀初頭、肌を露出するエキゾチックな舞踊で絶大な人気を博し、多くの男性遍歴を重ね、最後はフランスの国家機密をドイツに売り渡したとして処刑された経緯から考えれば、確かにそう呼ばれるはずです。しかし、見方を変えて、男性をしのぐ能力と強い意志を持った、真に自立した女性、それゆえにかかわった男性の運命を左右してしまう。それが「ファン・ファタル」だと考えてみると、いままで語られてきたマタ・ハリ像とは異なる姿が見えてくるのではないか。そう考えて、マタ・ハリの波乱の人生をたどってみました。
マタ・ハリこと、マルガレータ・ゼレ・マクラウドは、オランダ北部の小都市レワールデン生まれ。輝くような小麦色の肌と黒々とした髪、そしてエギゾチックな瞳を持つ、空想好きの少女でした。生家は帽子屋を営む裕福な家でしたが、父の事業の失敗と母の死で運命が一転。この身上の激変が思春期の少女にとって、大きな影を落としたのでしょう。彼女は結婚相手を募集する新聞広告に応募して、19歳で11歳年長のレオド大尉と結婚。
しかし結婚生活は7年で終結。幼い娘を夫に残して、マルガレータは新しい人生を夢見て、パリへ旅立ちました。 |