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バックナンバー14  栄光と不運のはぎまを激しく生きた女優 −ロミー・シュナイダー     


  人生は必ず、明と暗、光と影の部分を持っている。人によって、その振幅が大きい人 とそうでない人がいる。
ドイツ人女優ロミー・シュナイダーはまさに、光と影の深いはぎまを激しく駆け抜けたひとりではないだろうか。

  1960年代のパリ、女優ロミー・シュナイダーはドイツから、活動の場をこの地に 移して、数々の作品に出演。国際女優として高い評価と人気を得ていました。そのこ ろ、パリに在住していた私は、「ルートヴィヒ」や「華麗な女銀行家」などで彼女の 演技を見て感動し、限りない憧れを抱いていました。しかし、ロミーは、1982年、44歳 の若さで急死。その後明らかにされた彼女の人生は、栄光の数だけ、挫折と苦悩があ る、波乱に満ちたものでした。ロミーは今も、強烈な個性を放つ、特別な存在として 私の中に刻まれています。

 ロミー・シュナイダーは、1938年、ウィーンで生まれました。両親をはじめ、俳優 や芸術家を多く輩出した家系であったため、自然に女優の道へ。十五歳で映画界へデ ビュー。16歳の時、皇妃エリザベートを演じたオーストリア映画「プリンセス・シシー」 で一躍世界中に知られるようになりました。その後、続編も製作され、清純で控えめ なシシーのイメージはロミーの代名詞になります。しかし、彼女はそれに飽き足らず、 シシーから脱却し、女優として飛躍するために新天地パリへ向かいました。そこには さまぎまな出会いが待ち受けていました。
 その最大のものは、気鋭の監督ルキノ・ヴィスコンティとの出会いです。舞台 「あわれ彼女は娼婦」で認められ、映画「ボッカチオ'70」に出演。さらにオーソン・ ウェルズ監督作品「審判」と続き、ロミーは一躍国際女優として花開きました。 彼女を想う時、私は常に美貌の歌姫マリア・カラスを重ね合わせます。カラスも ヴィスコンティに鍛えられた一人で、自らの強い意志に従って、恋に仕事にひたむきに 打ち込み、名声を得ました。ロミーもまた、ヴィスコンティの卓越した演技指導に全身 全霊で応えたことは想像に難くありません。美貌というより、むしろ内面からにじみ 出る輝くような表情の美しさ。台本を熟読し、行間を読み、言葉の裏に隠された意味を 考える。演じる役の本質をつかもうとする強い意志。ヴィスコンティはそうしたロミーの才能を引き出して、大役を与え、後に「最後の世界倒スターの一人」と最大の賛辞を送っています。

  女優として不動の地位を確立した一方、私生活では、アラン・ドロンとの恋愛と破局、 ドイツ人の演出家、俳優ハリー・マイエンとの結婚、長男ダーフィトの誕生。マイエンと の離婚、年下の秘書ダニエルとの再婚と離婚、と変化が続き、本人の願いとは裏腹に、 安定した幸福は長続きしませんでした。晩年は、大病を患い、愛息の事故死という大 きな衝撃に見舞われながらも、最後の作品となった「サン・スーシの女」では二役を演 じ、本物の女優への激しい闘志を見せました。しかし、心身の消耗、それを押さえるた めのクスリの乱用は、ロミーを再びスクリーンヘ戻すことを阻みました。
 ロミーの短い、振幅に富んだ人生を考えると、いくつかの二律背反性が見えて来ま す。ひとつは、女優として育て、スターとしての地位を与えてくれたフランスへの想い がある一方で、生まれた地であり決別したドイツへの憧慣です。「フランスからは生き ること、愛することを学んだ」と言い、一方で「ドイツで舞台に立つことが私の願い」と 述べています。また、平凡な家庭人としての幸せを望みながら、そこに安住できず、 「カメラの前に立つと、私は別の人格になる」と仕事への激しい情熱と闘志を見せる。相 反するもののはぎまで苦しみ、結局は苦しく辛い選択をしてしまうロミーでした。

 「人生は短い」。それが幼いころからロミーの口癖でした。まるで自らの運命を予期 していたかのように。それゆえ、何かに憑かれたようにすべてに果敢に挑戦していった のでしょうか。ロミーの演じたシシーは、不自由な生活の中で自由を求めて懸命に生 きた。しかし、実像のロミー・シュナイダーは、自由な生活の中で、敢えて不自由さを 求めたのではないでしょうか。本当の自由とは何か、本当の自分とは何かを追求する ために。




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